主人公のモース警部は, 独身, 酒好き(糖尿病なのにパブにいりびたっている), クラシック好き(特にワーグナー)という 面の他に, 大のクロスワード好きという面を持つ人物です. 部下のルイス刑事は, 対照的に地道に足で稼ぐタイプの 刑事で, そのコンビぶりが面白いです. モースは捜査中にルイスを連れてパブに入ることが多いのですが, 自分はエールを飲むのにルイスにはオレンジジュースしか飲ませないし, ルイスをすぐにどなり散らすなど偏屈な面もありますが.
作家自身もクロスワードパズル作りで有名な人で, 文書中に散りばめられてるペダンティックな言い回しからは, かなり博学な人なんだなぁという印象を受けます. また, ストーリーの進め方もクロスワードパズルを解くような雰囲気があります. 主人公は直感(妄想?)から, 推理をめぐらしては, それを壊し, また直感を得て, という繰り返しから犯人に迫って行くのですが, 途中でのはちゃめちゃな直感ぶり による推理と最後のどんでんがえしのバランスが非常に良くできていると思います.
作品は, 短篇集も入れると14作あって, 昨年最後の長編と噂されている, "悔恨の日"の翻訳が出ました. 英国推理作家協会ゴールドダガー賞を取った作品, "森を抜ける道"や"オックスフォード運河の 殺人"も面白いのですが, わたしの一番のお勧めは, 論理の飛躍のさせ方という意味で, 一作目の"ウッドストック行き最終バス" です.
ちなみに, 2001年4月から, NHK BS2で毎週木曜日, テレビドラマ版のモース警部が 放映されています. John Thaw扮するモース警部は原作のイメージより カッコ良い気もしますが, ルイス刑事との掛け合いや, イギリスの町並みやバーの シーンなど, 原作の雰囲気が良く出ていると思います.
文庫版は早川書房から出ています. 何か面白そうな本を探している方には ぜひお勧めです. 一度本を手に取ってみてはいかがでしょうか?